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見学会 成城五丁目猪股庭園

2022.05.23

成城五丁目猪股庭園は(財)労務行政研究所の理事長を務めた猪股猛氏の邸宅で、現在世田谷区に寄贈され無料で公開されている。

本庭園は戸田芳樹の著書『昭和の名庭園を歩く〜作庭のおもいとかたちを紐解く〜』でも取り上げており、今回はより設計者の目線で話を聞いた。当日は明るく晴れた天気ではなく、薄くぼんやりと曇った花曇で、少々暗い⾊味の空と優しい光により、⽇本庭園の素直な姿を見ることができた。

※1
入り口の門は、道路の⼈流動線に基づいて、左から来る来園者の視線と合わせて左側が⻑く、右側が短い、⾮対称の美しいバランスで設けられていた。
左右の松は真っ直ぐに伸びているのに対して、中央の松は⾃由に傾いており、その美しい曲線を透かして主屋が少し⾒える。

※2
⾨をフレームとして、園内の⾵景が覗く。

※3
緩やかな敷⽯と、曲線的な灌木が被さる⽯組で来園者を迎えている画を演出している。⼊⼝の⻑い延段、縁側の⽯組、松の傾く⽅向は⽞関に向く進む⽅向を誘導していながら、特徴的な⾅形の⾶⽯で、動線の曲がる場所を表現している。

※4
⽞関から⼊⼝を振り返る。園路は緑に囲まれているが、植物の配置で全体的な明るさは保たれている。

※5
⽞関を⼊ると、壁で内部への視線を抑えて、プライベートを守りながら、低い簾で中庭の光、緑、⾵を通して繋がりが作られている。

※6
⽞関から広間への戸を潜ると、手前の敷⽯から、奥の樹林の中に隠れている滝の⽯組へ視線が誘導され、配置軸線が見えてくる。
主庭の中央は地形が少し盛り上がり、スギゴケの水捌けを良くする上に、後ろの園路を遮断して、通過する⼈々の⾜元を隠す効果もある。これは用と美を兼ねたデザインと言える。
アカマツについて、右側は中央に傾き、左側はそれを受けているように良いバランスを維持している。

※7
隣の洋室から⾒ると、左側の⽵垣、園路は右側の景⽯の欠けたところと平行しており、線形が互いに呼応している。⽣垣は広間の“男の庭“と⻄側の和室の“⼥の庭“の間に柔らかい境界線となっている。

※8
納戸の窓は庭園の⼀⻆を絵画のように切り取っている。

※9
⻄側の“⼥の庭“は多種多様の花⽊で⽣活感が創出されている。主庭との間の⽣垣を背景として、書斎に向いて灯籠が設置されており、火袋からの光が照葉樹に反射しててらてらと光るようになっている。書斎から連続する緑の先に夜の灯りを楽しむことができ、広間からも⽣垣の上に浮かんでいる灯りが⾒える。

※10
居間から茶室にかけては露地が作られている。主庭と路地の間の光悦寺垣が、主庭側としては奥が広く、路地側としては奥が狭まるような角度になっており、それぞれ遠近法で広く・逆遠近法で奥行きを演出している。⾶⽯の凹凸が組み合わさったように配置されている狭い路地を通って、屋上に苔が盛り上がった低い⾨から先へ進むと、道が曲がり、灯籠と⼿⽔鉢が配置されている入口空間となる。主庭と違い、茶室は別の空間として演出されている。

 

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