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荒木芳邦の東京での作品を見る-1

2019.05.23

■プロローグ
10連休のさなか、新宿と池袋で作られた荒木芳邦(1921~1997)の作品を訪ねた。荒木は関東での作品は少なく、残念ながらすでに失われたものもあり貴重な2作品と向き合う貴重な機会を得た。

新宿西口のNSビルは1983年の作で建築は日建設計、内部に大規模な吹き抜けを入れたダイナミックな空間が売り物の建築である。しかしランドスケープに与えられた空間は敷地との間の皮一枚の植栽地で、これでは荒木も力の出し様がなかったのではないだろうかと、先ず心配してしまう。

一方、東池袋中央公園はサンシャインビルのお膝元の立地なので、多くの利用者の憩いの場として賑わっていた。ここでの荒木芳邦は面目躍如の活躍を見せ、荒木節全開のパワフルでエキサイティングな世界がそこに展開していたので詳しく見ていきたい。

■NSビルのランドスケープを見る
まず新宿駅西口から中央公園に延びる地下通路を通り、京王プラザビルの前庭を経て地上に出る。この前庭は幾度来ても新しい何かの発見がある。意味深いというか不思議な空間でつい足がそちらを向いてしまう。

NSビルのロケーションは西側に都庁第2庁舎、その背後が新宿西口公園、駅側にはKDDIビルと、商業施設との連携に乏しく、ビジネスとしてはかなり苦戦している模様で、利用者の姿がほとんど見られない。また、新宿西口エリアの道路景観は実に画一的で人間味がなく、歩いている人は間違えて来た外国人ぐらいであった。

このNSビルのランドスケープデザインは明らかに建築家が手掛けたもので、デザインを見れば一目瞭然である。ここで荒木は何をすれば良いのか相当迷ったのではないかと推察した。この狭い空間を何とかかたちの整った作品にする為に自分の持つ造園技術の全てを使い、アイディアを捻り出した空気がこちらに伝わってくる。本人の苦労が偲ばれる作品だ。

この無機質な建物の箱を「皮一枚」でなんとか見せるには、樹木を「納まり」ではなく園芸的樹種による「驚き」に活路を見出そうと荒木は考えた様だ。オリーブの大樹を中心におき、針葉樹の高木でアクセントを付け、常緑広葉樹でボリュームを出している。低木にもハイビャクシンやキャラ等の針葉樹を扱い、一般の外構との差違を明らかにしている。

そういえば荒木のランドスケープデザインは園芸家と組んで景観を作る事を早くから始めて効果を出した。朋友、鷲尾金弥氏とは大阪花博などの作品を二人で仕上げている。竣工当時のNSビルは園芸種による華やかな空間であったと記憶する。しかし、今はその面影はなく、少々重くなった樹木の「おさまり」で見せる造園空間となったと私は感じた。建築外構になんとか園芸的な色気を付けようとした荒木の意図をそこに見る事は出来ないのは残念である。

設計意図が伝わっていない事も残念だが、この高層ビルに対して樹木の高さが足りないのも課題と言える。もう35年経ているのだからもっと突き抜けて高く育っても良さそうなものだが、こぢんまりまとまっており、都心のスケール感がうかがえない。日本の街路樹やマンション等の建築外構に共通して見られる樹木の姿で、都市や建築のスケールとは無関係に盆栽の様な仕立て方をしてしまっている。樹木は真っ直ぐに伸びる芯を止め、小さくまとめる職人的技法については識者を交えた議論が必要であろう。

気を取り直して周囲から見るが、街路樹のケヤキに対して外構はあまりに貧弱なバランスだが、要所にオリーブを配し、なんとか姿を整えている。建物の角には常緑広葉樹で押さえ、街並みを柔らかくしたランドスケープの基本デザインにも忠実である。しかし、荒木が庭園作家からスタートした事も空間の中に垣間見られ、どうしても囲んだ空間になってしまう。車寄せエリアでは道路との間に長い生垣を用いて領域を確保しており、北側のスペースは樹木に囲われた庭園風な設えとしている。新しい街、都市スケールの街なので、もっとランドスケープらしい大らかさは出して欲しかった。

建築主導のプロジェクトにおいてはあの荒木芳邦にしても、植栽エンジニアの立場で参加したのであろうか。今はない東京での他の作品「東京海上火災本社ビル(神田)」「三井物産本社ビル(大手町)」ではシャープでダイナミックなランドスケープを実現しただけに、NSビルは現在少々残念な結果となっていた。

戸田 芳樹

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