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新宿のデパート屋上庭園を見る-1

2018.08.01

今年の春先、近年デパート等の屋上がどんどん面白くなっているという情報を元に新宿の東口、南口のデパートを見ることとした。このところ多くの超高層ビルを見慣れたせいか10階程度のデパートはヒューマンスケールに感じてしまう。

まずはバスタの屋上へ。新宿にバスタが出来て南口が一層元気になった。昔、長距離バスの出発地はJR新宿駅まわりに点在しており、間違えて大慌てした経験がある。バスタはJRとも直結し、商業施設のメニューも豊富で便利。その上、屋外空間も充実している。外国からの観光客が多く行き交い、インバウンドの力が漲っている1Fのデッキフロアーは南に面している。ここでは線路上空間が大きく広がり、背後のNTTビルと共に都市らしいダイナミックなプロポーションが見られる。こども達が行き交う電車を見ながら大声で叫んで楽しんでいる姿は誠に幸せな風景「鉄ちゃん」誕生のシーンでもある。

1Fのランドスケープはバランス良く整えられ、私達風景探偵団はここから上部の秘密の花園へ行く事にした。エスカレーターで上り、レストランの脇を通って屋上空間に出ると、さらに1階分高いスペースが目に入る。上がっていくと、今流行のグランピングと家庭菜園のスペースが現れる。この2つは商業プロデューサーの感覚に響いたテーマだろうが、駅の施設という開かれた空間と言うよりは、プライベートでマニアックな空間に感じられ、あまり長居が出来ない雰囲気だ。階段等細かな空間アプローチは「垂直露地」と名前を付けたくなる程、景観をつないだ変化があり様々なシークエンスを体験させてくれる。所々にあるまとまった広場でイベントが仕掛けられ、商業施設が進化したひとつの事例に接する事が出来た。

次に東口の雑踏をかき分けて丸井へ向かう。エレベーターから出た瞬間に光と青空が目に入り、風のそよそよ感も好ましい。「英国様式庭園Q-COURT」と名付けられた屋上空間は頑張って英国らしさを出そうとしている。「英国様式」という名に接するだけで懐かしく感じるが、私達の日本庭園の定義すら曖昧な中、何を英国式として表現しているのだろう。ここには薔薇の園(整形式庭園)、木漏れ日の庭~東の庭(パーゴラで視線誘導した自然風の植栽)、早春の庭~南の庭(円形デッキを中心に彩りの良い草花)、門出の庭~西の庭(円形テラスにつる植物が絡むトレリス)、実りの庭~北の庭(パーゴラの下、トピアリーやエスパリエ)等、多彩な庭園のメニューが展開している。

この屋上という完全に区画された空間に対して自在なデザインではなく厳格にゾーニングされた空間の集合は何か違和感をともなう。各々は美しい機能も整理されているが、バラバラに存在しランドスケープデザインで重要な施設の繋がりや、シークエンスの楽しさが見えて来ない。有機的な連続を私達デザイナーは常に追求しているはずなのだが。

戸田 芳樹

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