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等々力の飯田十基の庭園を見る-1

2018.07.18

■プロローグ
等々力渓谷は自然の深い爪痕である。ともかく深い。等々力駅よりいきなり10m以上下って行くと、そこには別世界が広がる。

周囲が静かなので、せせらぎと鳥のさえずりが聞こえるだけの、と言いたいが休日はそうもいかない。狭い園路を大勢ひしめき合い、ゆっくりと立ち止まり景色を見る余裕もないくらいだ。木もれ日の下、緩く曲線を描く園路を川沿いに下って行くと、飯田十基が作庭した庭園の入口が見えて来る。
飯田が作庭した庭園は個人邸が多く、なかなか見る機会が少ない。この都市公園内にある庭園は自由に見られるという事で大きな期待を持ってやって来た。

■門からの上る園路の景観
入口門は園路から2段上がり、石張りをした格式の高いもので、フレームに枠取られた背後の景観は野趣に富み、庭園と言うより林地の様な風情を見せている。正面中央に小さいがゆったりとした石が景を添えており、注意深く見ると流れの末流とおぼしき痕跡が見える。それでは上流を目指して早く庭園を見たいと気がはやる。

入口門から園路は左右に分かれる。右手は勾配のきつい石段、左手は緩やかな園路、どちらに行くか迷ってしまうシチュエーションだ。しばらくその場にいると意外にも右手の急な石段を登る人が多く、私も竹林をぬって登って行く事にした。

しばらく登ると斜面の中程に少し平坦な場所があり、池らしきものが見えて来る。しかしこの池は手前がコンクリート護岸で線形も整っていない。山畔側は洲浜にしているが、角度が急な上、石が大きくてバランスが悪く、とても上級の庭師の手になるものとは思えない。園路添いには高さ3m程の滝をしつらえ、左右に水を振って変化を付けて水音も涼やかで悪くない。しかしよく見ると青石を使用した滝組は奥行きを感じさせず、これが飯田十基かと思われる作風で、後から作られた可能性もあるのではないだろうか。

気を取り直してさらに登ると、流れや池が見え始め、そこに佇むとやっと飯田十基の世界と遭遇した実感が湧いてきた。小さな平坦地から上を望むと滝石組、護岸、石橋、水上の飛石等が展開し、これがあたかも「一筆書き」で描かれた様なダイナミックな表情で、これぞ石組と言わんばかりである。現状では下部の池だけに水があり、上の流れ水路には盛土しており、草木が生い茂る情けない状態になっている。デザインの骨格、作者の主張が見えて来ないので、目の前にある余計なものを消して、そして水の流れや下草を付け加え、自分の想像で空間を作り出しながら観賞した。使用している山石は黒い筑波石、ここでは石を「立てる」とか「寝かす」ではなく石の持つ一番良い表情を大きく見せる方法を取っている。役石は各々が有機的に連携して力強く、ここに水があれば、黒石に水は白く浮かび、うねる様な眺めが見られるはずだ。これぞ飯田十基の世界が展開していただろうに大変残念である。飯田の石組はもっと大人しいものと考えていたが、地味だが強く組んだ石のたくましさは別格と言える。

戸田 芳樹

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