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名古屋 徳川園を訪ねる-2

2018.06.07

■明るい広がりのある龍仙湖
そこから流れは園路としばらく平行して進み、池(龍仙湖)に注ぎ込む。暗い空間から一転して水面上の青空が目に入り、開放的な気分が満たされる。パノラマ的な池の景観は何処までも水平で、樹林地の垂直的空間とは別物の美しさを見せている。後方を振り返ると禅の説法にある龍門瀑がお馴染みのデザインで作られている。池畔を眺めれば伊藤流のダイナミックな石組や、水辺に接する飛石が施され、見ても歩いても楽しい限りである。

園路はいつの間にか池の中を進んでおり、島と橋が交互に現れてあたかも水上を歩いている様な気持ちになる。一方西端の小高い丘にも園路が続き、四阿(瑞龍亭)を設けて高所から変化のある景観を提供している。池の北端まで歩き振り返ると、みどりのボリュームと水面の広がりと最奧部のレストランがバランス良く見え、景観ポイントの作り方の狙いも明確である。そして憧れの中国庭園を模した西湖堤も設置しており絶好の撮影ポイント。当日は丁度大安に当たり、この堤で結婚式の記念撮影がなされており、とても幸せな風景が切り取られていた。

西湖堤は中央に円形の橋があり、当然バリアフリーに出来ない。そこで横に木橋を設けているのがいかにも現代の約束事だが、もちろん美しくはない。そして池畔をめぐり階段を上り、ふたつの橋を通って入口部までゆっくりと帰り徳川園を堪能した。

■エピローグ
徳川園の特色はまずわくわくさせる導入部にある。池や流れをちらりと見せる立体的な景観構成が観賞者の期待度をあげ、まさに伊藤のサービス精神躍如である。それに対してどこまでも広々と広がった池の水平的な構成はここでしか出来なかった大胆な表現を思い切って行った力技と見た。そう言えば徳川園が出来る前の公園では、ここは広がりのある芝生広場だった記憶があるが関係のない話しであろう。

次にシークエンスの「名・暗」をかなり強く演出していることがあげられる。これは既存林の保全を前提として進めた事と、現況地形に手を入れなかった結果がコントラストを強く出せた要因だったであろう。

そしてディテール、特に石組は滝であれ護岸であれ素晴らしく独創的である。伊藤作品を数多く見ている訪問者にとっては石組が伊藤の過去の作品と結びつきとても懐かしい気持ちになるのではないか。
この徳川園に接して日本文化の保全・育成と新たな創造の必要性を改めて深く感じる事となった。

戸田 芳樹

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