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トークイベント「もっとやれる!日本の公園」に出席しました

2018.05.17

株式会社コトラボ主催によるトークイベント「もっとやれる日本の公園」に出席してきました。登壇者は、公園に関わる専門家としてニューヨーク市公園局につとめる島田智里氏と、豊島区で公園行政に携わる宮田麻子氏、都市環境デザイン事務所「Groove Designs」で民間の立場から公園に関わる三谷繭子氏の3名でした。

登壇者がいずれもニューヨークの公園に詳しいため、ニューヨークの公園と日本の公園を比較しながら、日本の公園の可能性について議論するというものでした。ニューヨークの代表的な公園について紹介があった後、各登壇者がそれぞれの取り組みについて紹介し、最後に座談会において議論するという流れで進められました。

■ニューヨーク市での取組み
ニューヨークの公園を魅力的にしている要因の一つに、ニューヨーク市とパートナーシップを結び、公園の管理運営に関わっている多様な団体の存在があります。スチュワードシップ、コンサーバンシーについては島田氏より詳細な紹介がありました。

島田氏がニューヨークで最も好きな公園として挙げていたのが、2013年にオープンした公園「ハンターズポイントサウスパーク*」でした。マンハッタンから1駅、クイーンズ地区に位置した公園で、5000戸規模の住宅に隣接して開発されています。興味深い点は、都心に近いウォーターフロントで工場だった敷地を、公園として再生させたということでした。日本でも今後参考になる事例ではないかと感じました。この公園が開発されたきっかけとして、ニューヨークがオリンピックの開催都市に立候補したことが契機になっていたということも、東京との共通点を感じさせます。

ニューヨーク市では市内の街路樹は10年に一度調査を行っています。2015年の調査では、1年間準備を行い、ウェブアプリなど市民参加できる仕組みを整えた結果、市民2241名が調査に参加、60以上の企業団体が協力を行い、ニューヨーク市内全ての街路樹68万本について調査が行われたそうです。その調査結果から、インターネット上で街路樹の情報が見られる「ニューヨークシティ・ストリートツリーマップ*」が整備されました。このサイトへアクセスすると、Google Mapとも連結しストリートビューで街路樹を見ることができます。街路樹がもたらす効果が「雨水流出抑制で、一本あたり年間20ドル貢献」などのように具体的な金額で評価されています。

■ 豊島区での取組み
豊島区は南池袋公園など、稼ぐ公園として注目されている成功例がある一方で、未活用の中小公園も多く残されているようです。それらの公園は30〜40年前に整備されたものが多く、現在の利用ニーズに追いついていない状況です。町会の高齢化も進んでおり、新しい入会者も少ないことから、公園の利用者減少に拍車をかけています。

そのような状況を変えるために、豊島区では地元企業と協力し、中小公園や遊休地の活用を進めています。一例として無印良品を運営する良品計画とパートナーシップを締結しているそうです。現在、東池袋エリアでコミュニティガーデンの整備など、小規模公園を子育て世代にとって魅力的な地域コミュニティの場へと再生するプロジェクトに、区と良品計画で連携して取り組んでいるそうです。このようなパートナーシップが、今後公園という空間をどう変えていくのか期待されます。

■ 「Groove Designs」での取組み
三谷氏からは、民間の立場でどのように公園における場づくりを行っているか紹介がありました。ある公園整備の事例では、ワークショップ等で市民から意見を集め、具体的な使い方を想定しながら、公園のプランニングと公園整備後のマネジメントプランの計画を同時に行っている例が紹介されていました。

公園に賑わいを与える上で、公園を使いこなすための仕組みづくりが重要になりつつある現状を考えると、そのような公園のマネジメントプランの計画が、今後益々重要になってくると想像されます。公園のハードの計画と同時に、公園のマネジメントプランの計画を行うことが、設計でも今後求められるようになるのではないかと感じられました。

印象深かったのは、豊島区の宮田氏が「ニューヨークの公園と日本の公園との違いは使い方にある」と述べていた点です。トークイベント全体を通しても、ソフト面での議論がほとんどでした。公園についても、「ハードからソフトへ」や「モノづくりからコトづくり」などと指摘され始めて久しいですが、そのような社会状況を反映したイベントとなっていました。
現在は「ハードからソフトへ」といった理念だけでなく、具体的な公園活用の仕組みについて、試行錯誤されている状況です。今後公園活用のメニューについて整理が進めば、それがより一般に広がっていくと考えられます。

公園の設計業務においても、今後は公園活用の仕組みづくりが求められる機会が増えるかもしれません。その際には「Groove Designs」のようなマネジメントプランの作成に長けた事務所との協働が必要になってくる可能性が感じられました。

今回のイベントで取り上げられた公園は、大都市の都心部の公園がほとんどでした。そのような立地的に恵まれた公園ではなく、郊外の中小規模の公園の活用方法については、まだ見えない部分が多いように思われます。今後の課題として、様々な状況の公園がある中で、より大きな視点で見た各公園の位置付けと活用の計画が必要ではないかと考えられました。

深水 崇志

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