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宮島 厳島神社を訪ねた-2

2018.04.02

橋のたもとの谷に下りると案の定、橋の真下に小さな滝を用意していた。アーチ状の橋上は落水の音はわずかだが、谷間では大きく響く造園の技を用いている。そして天端が平らで座りやすい石を用意、そこからの低い視線はより親水性を持たせ、橋がフレームの役割をして上流の風景を切り取って見せている。

谷に沿って登ると所々に低い滝が様々な落水の景色を見せている。滝添石に当たる巨石は自然石そのもので、間には少し小振りな石を水落に使っている。この辺りは旅館の離れと谷が近接しており、何処までが谷で何処からが庭園なのか区別がつかない。歩いて行くと自然に建物の側まで寄ってしまう作り方は今日では困難であろう。自然の谷に架かるとは思えない切れ味の良い庭園風の石橋を渡ると大石と狭い園路があり、石の上部に石が水平に乗った、ストーンサークルの遺跡を思わせる石組まである。小広場は昭和22年の台風でながされた桟敷を記憶した「ひょうたん桟敷」を、石で造形しているのも粋なデザインと言える。

さらに進むと段々険しくなり、奧に奧にと誘う様に低い滝が連続して見える。各々が落水を工夫しており、次はどのデザインに出会うか楽しみになる。花崗岩の岩盤を水が伝わる様子は韓国でよく出会う川と同じ表情をしており、広島の地質は大陸に近いと感じる。また少し大規模で土木的に見える幅広い滝もコンクリートを見せないように自然石で隠した丁寧な作り。最上部の滝では巨石が川の主のように中央に座り、周囲の山々を背景としてまるで大名庭園の様なダイナミックな風情を醸し出している。

延長500m園路と谷を行き来していると、日頃の運動不足が全身に。最上部の滝から下って来ると園路の脇に存在感のある自然石を発見。この石は一種の道しるべで、それに添って二方向に道が分かれる。このランドマークに先人の知恵が込められているように感じられた。

もう一度厳島神社に戻ると、山中の谷とは全く違った明るい人工的な水路と出会う。ほっとした気持ちになったのは何故であろうか。強く美しい風景はインパクトが少々強すぎると言う訳ではなかろうが。

■エピローグ
宮島は日本人の自然観と美意識をとてもシンプルに感じられる空間だと今回思った。
島に向かうフェリーから見る前方の山々は変化に富んで厳しく、これから厳かな神域に入るイマジネーションを想起してくれる。そして帰りのフェリーから見る本土の穏やかな山並みは何かを成し遂げた後の気持ちを代弁しているようで、この対比が素晴らしい。
また人類の永遠のテーマと言える「人と自然」の関わり合いを3つのステージで見事に感じさせる場が作られている事は重要だ。

1.完璧に構築した建築に自然の変化を加えた人工空間。
〈厳島神社の建築美と海の潮のリズム〉
2.自然の猛威を人工で防ぎ、自然を感じさせる人工+自然空間。〈紅葉谷の自然に対する人間の英知〉
3.殆ど手が入っていない自然に包まれた自然空間。
〈弥山の原始林と人間の関わり〉

言葉では簡単だが、具体的な空間を作りそれを継続している努力を私達はリスペクトすべきであろう。色々と深く考え、楽しませて頂いた宮島であったが、大変残念な事に大鳥居の正面に10年前に作られた美術館がまた大きくなったように見えた。まさに神をも恐れぬこの美術館が早く無くなって欲しいと祈るばかりである。

戸田 芳樹

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