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一茶双樹園を訪ねて-2

2017.08.16

流れは右から左側に流しており、滝口には滝添石、遠山石が置かれているが、表現が少し弱々しい。その上、低木が茂って見辛くなっており滝口の意匠としては残念である。正面付近の流れには手水鉢と井筒と設置しているが、流れのスケール感に比較して私は大きすぎると感じた。昭和初期における作庭家の施設に対するプロポーション感覚がこの様なものだったのか、定型化した作庭術をあてはめた結果であったのか疑問である。

流れは下流に設置している根府川石によるイカダの橋が見所であるが、水平に置かれていないのが残念だ。大型の燈籠を赤松に寄せて設置しており、お寺にある様なスケール感と形状が民家の庭園にインパクトを与えている。庭園で使用されている石は流水などで浸食された怪石が多く、石組を見せると言うよりも商家の財力で購入した石そのものを見せている様子も覗える。

「お茶間」の西側に光悦寺垣に囲われた小庭は、透けた垣となつめ型の手水鉢で構成し、見え隠れする風情はまさに日本の美と言える。「奥の間」の東側は茶庭として落ち着いた風情を醸し出し、主庭とは打って変わった優しい雰囲気が溢れている。内露地に向かう飛石はあえて小振りとし、新たに切石を加えてリズム感を出し歩く楽しみを加えている。

主庭の正面には1995年の改修の時点で工場が隣接しており、目隠しが必要とされ常緑高木を植栽してその目的は達せられたが、現在その工場がなくなってしまっていた。すると後方にある赤城山と呼ばれる小さな丘が庭園から見えるようになった。もっと良く見せるには赤松の横にあるモッコクを伐採して、背後に美しい借景を望めば奥行きの深い庭園となるのではないかと思った。

竣工して20年以上経たが、グリーンダイナミクスが管理・運営を担当し、非常に良好な状態に保たれていた。樹木の生長の速さに驚かされたが、特に低木が石組を隠し庭園の物語が読めないのが残念で、思い切った管理も必要と感じた。又この書院を使用した催しが多く、人の出入りもあり、単なる文化財ではなく、今に生きる施設として存在している事が素晴らしく、建物も庭園も活き活きと見えるのはその事であろう。

戸田 芳樹

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