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駒沢公園を見る-1

2017.07.13

■プロローグ
久し振りに駒沢公園へ。ここは東京オリンピックのサブ会場として1964年に整備された公園で、国家プロジェクトのひとつであった。50年経た現在でも、運動施設の充実とそれらを活かした公園のデザインが高品質な空間となり私にとっては評価の高い公園のひとつである。

当時はランドスケープデザインの黎明期で、設計事務所もほとんどなく、鈴木昌道、木村弘らが都市計画の高山英華や造園学の横山光雄の元で都の職員達と一緒にランドスケープを担当したと聞いている。駒沢公園は空間の構造、システムがしっかりしており、公園の骨格が分かり易い。これは都市計画的な大きな視野とランドスケープ的なデザインの組み合わせが上手くいった良い事例なのではないだろうか。

■公園の骨格は分かり易い
公園は都道によって南北に分断されているが、そのふたつのエリアをループ状の園路で結び周回できるように組み立てたのが素晴らしい。このループ園路に対して、運動施設は都道に直交した軸を明快に使って配置している。特に中広場の軸線は強く、幅の広い大階段と共に公園のシンボル空間として存在感を出している。この広場を担当した建築家の芦原義信は著書「都市のデザイン美学」の中で、階段と広場と塔の関係を、階段を上る垂直シークエンスで丁寧に解説している。実際に訪れても見所のある劇的な空間を出現させた事が分かる。同じ世田谷区にある砧公園は元ゴルフ場を時間の経過と共になし崩し的に施設を加えたもので、駒沢公園とは違い、システムの見えない公園となっている。勿論システムの見えない公園も利用していて疲れないのでとても良い空間であるのだが…

■西側の入口部から入る
公園の西側にメインの入口があり、そこから入ってみる事とする。日差しが強い日曜日の午後、公園の西口に佇むと、存在感溢れるゲートウォールに出会う。デザインはモダニズムの影響を受けてか、シンプルで有機的な表現となっており、当時の最先端をいくものであっただろう。街で見られるお馴染みの落書きは嫌なものだが、この場所に対するリスペクトがあるのか、まじめに時間をかけて描いている。

ウォールの直ぐ後ろに、洒落たカフェが最近整備され集客していた。都市公園に魅力付けをし、もっと市民に活用してもらいたいと上野公園等にもレストランが出来て評だが、都市公園の姿も徐々に変化しているようだ。

ここからのメインアプローチは公園規模(41.2ha)を象徴するようにゆったりとしたダイナミック空間になっている。道幅は12m程で高さ20mを超えようとするケヤキが10mピッチで植えられ、わずかにカーブした線形が人々を奧にいざなう。ケヤキは無駄な剪定がされてなく、みどりの天蓋が続き、人がみどりと一体となった気分で歩みを進められる空間である。このケヤキの並木は空気までおいしく感じさせ、心を豊かにしてくれる力と美しさを持っているようだ。園路は広くない方が良いと日頃考えていたが、このスケール感による幅広の園路は私の小さな考えを吹き飛ばしてくれた。

公園周辺部の植栽木は現在あまり使わない常緑樹のシイを主体に選んでいる。このシイの扱いは山手にある屋敷の周囲に植える同じ手法で、ヒマラヤシーダも含めた風景はまるで昭和の名残の風景のように思えた。

■ループ状の園路は利用率が高い
公園を回るループ園路は、自転車道・ジョギング路・歩行者路の3ゾーンに分かれ陸上競技場と同じく左回りで進んでいる。様々な年代の大勢の人が各々自分に合ったスピードで利用しているが、視覚スピードに対して音がなくとても静であった。自分だけの時間を誰にも干渉されず、有意義に過ごそうとする成熟した多様性を私はその静寂さから感じ取った。日本も大人の社会になったのだなぁとしばし感慨に浸ってしまった。

このループは高い所もフラットや低い所もあり、少し勾配の付いた園路を進めば光や風に出会い、トンネル等も体験できる。変化に富んだコースなので何度利用しても飽きがこないからこれだけ大勢の人々が利用して楽しんでいるのであろう。

戸田 芳樹

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