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造園技能グランプリ静岡大会を審査して-2

2017.03.30

銀賞の東京チームのコンセプトは「人と自然が奏でる美しさ」。アスリートの一人は竹の下ごしらえだけで初日を終え、明日完成するのだろうかとギャラリーをハラハラさせた。しかし翌朝一番に蛇篭を一気に空中にくねらせる大技で度肝を抜く演出。この仕掛けこそが造園技能グランプリの醍醐味である。

銅賞の広島チームは「未来への門」。コンセプトは難解だが「庭園の舗装を家族の軌跡」「渦は降りかかる誘惑」「斜面に点在する石は人の目」「竹垣は未来の自分の生き方」と見れば意図が読めてくる。秀れた庭園には作者が描き出す物語を読み込む楽しさが存在するが、この小さなスペースでも表現できる良き事例と言える。大阪チームは「人樹の寛ぎ」。等身大スケールのベンチだけで勝負した戦略的作品。しなやかに曲線を描く竹造形が庭園の全てに流れ、空間を支配しているダイナミックスさが人々の心を打った。

敢闘賞の長崎チームは特定された場所の自然ではなく、我々の原風景の要素をバランス良く入れながら作り上げた佳作である。全体的に少々説明的になったきらいがあり、独自性のある表現がもう少し出せれば上位入賞が可能であった。同じく福岡チーム「一滴一心」は枯山水の課題に「水」を使った野心作でギャラリーの興味を引いた。竹筒内に水を挿入し、小さな穴と竹の角度を工夫し、水の一滴を長時間にわたって流して象徴的に表現したのが光った。秋田チーム「波濤」は秋田の景勝地の表現で二辺の竹垣が強く美しく作庭中から興味を持ったが、風景をより強く表現するあまり小さな敷地内でのバランスを崩してしまったのが惜しまれた。

本当に庭師は多能工であると再度認識した。植栽は勿論、石工、木工、竹工、左官工までも庭師の技術範囲だ。まさにスーパー職人と呼べる存在ではないだろうか。これらの技術が庭園作品の質を上げていることは良く理解できる。そして、この技術の集積を現代社会にどう活かすべきか大いに考え、行動すべきである。庭師の皆さんの世界が庭園だけでは勿体ないことだ。視線を社会全体に転ずれば、まちの美観、まちおこし、環境教育、防災等を通じて地域の要となる人材の宝庫が庭師集団であると言いたい。グランプリに参加するレベルの庭師は今までいた自分の世界の殻を破って、地域の環境ディレクターとして活躍して欲しいと私は願う。美しき日本の為に。

戸田 芳樹

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