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国際文化会館の庭園を見る-2

2017.02.15

■流れと滝のデザイン
頂上部から少し下ったポイントに吐水部があり表情のある石を上手く使って見事な滝石組を組んでいる。石の大きさや形は違うが、京都の無隣庵の滝組を思い出させてくれるデザインであった。滝から流れは二手に分かれ、ひとつはダイナミックな枯流れが東部に向かい、もう一方は繊細な流れを西部の池泉に向かっている。

枯流れは幅が広く、途中芝生の地こぶや大振りの石の脇を通り、土留めを兼ねた石組の連続も見事である。この芝生の2か所の地こぶは庭園の中央付近にあり、後方の植栽地から浮き出して見える効果があり、主景としてのユニークさを表現している。植治は平面的な庭園に小さな地こぶを作った例は多いが、これ程立体的なのは珍しいのではなかろうか。また地こぶに続くポイントに白い巨石を2石据えており、ダイナミックな眺めを作っている。しかし根本の針葉樹のキャラが大きくなりすぎ巨大な効果が半減している。

一方流れは距離が短いが、各々に表情のある石を多種類使い、その変化を楽しむと共に、いろいろな想像をしたくなる空間である。植治のサービス精神を受け止めたい。レストランから見える滝は少し方向が違いかえって奥深い。本来池泉はもっと広がりがあったであろうが、小さくても意外に違和感なく、建物との相性も良い様だ。落水はボリュームがあり水音も大きい。これは滝の手前の左右に板状の岩を立て、より大きく響く様に設えたからであろう。特に滝の左手の立石群は迫力満点だが、この意匠は植治らしいのだろうか。また水落石がとてもユニークな形をしているのを見逃さない様にして欲しい。右手にある雪見燈籠が少々残念。本来、滝のすぐ側に置くものだろうか、以前は池の手前に置かれていたのではと想像したのだが、いかがであろう。

■様々な職人技を見る
階段、飛石、石組などのディールの随所に職人技満載で、それを追ってみたい。階段の石は全て柔らかく、角の立った石はなく、隙間に入れた石も丸い。また階段へ誘導する石はその方向に曲がっており、まるで孤篷庵の延段を思い出させる。重要な部分の石組には表情豊かな石を選び、人の視線を集中させている。芝生部の石は平坦な石で目立たなくして、芝が枯れた時に色彩のコントラストで主張できる黒い石をテクスチャーを変えて数石使っているのは誠にセンスが良い。

池部の石組は立体的な組み方で見所が多くあり、中でも西北隅の石に向けた4石による軸の構成は空間を引き締めている。職人技はまだあるだろうが現地に行って発見する喜びを満喫していただきたい。

■エピローグ
国際文化会館の庭園は昭和5年、植治により「和風迎賓館」として作られ、昭和30年に近代建築が建てられたが庭園は保存された。一般に和風から洋風の建築に変わると庭園に違和感が伴うのだが、それを感じないのは何故か考えてみた。

ひとつは建築家が庭園をリスペクトし、庭園との関係性を持ち続けてデザインした事である。各室から見える立体的かつパノラマ的な庭園の姿は圧倒的に美しい。2つ目は庭園の主要部と建物の間に芝生を設けボイドの空間を作り、各々の独自性を保った事。さらに芝生広場の美しい曲線園路はモダンなデザインの建物の延長と捉える事が出来る。3つ目は玄関の導入部での和から洋への転換、そして庭園部の洋から和へのスムーズな変化と驚きが建物と庭園との間に繰り広げられている事。ここに優れた建築家の理想的なデザインのあり方のひとつが表現されているのではないだろうか。

ともかく日本の近代を生きた国際文化会館の庭園はランドスケープアーキテクトと建築家の目で見て体験する価値のある庭園と言える。

戸田芳樹

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