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貞観園を見る

2015.09.02

かねてより望んでいた樹仙堂庭園見学友の会に8月2日に参加できた。東京から一路、遠く柏崎へ。柏崎駅で合流して最初の貞観園に到着する。バスを降り、県道にある入口から登り始めた時点から貞観園庭園の世界に入ったと感じた。うっそうとした森に囲まれた階段を左右に振れながら進むと、期待感に胸が膨らむ。息が切れ掛かった頃、地区の道路に遭遇、脇を流れる水が心地よく響いていた。

貞観園の構えは幅が広くて奥行きが深く、庭園の仕掛けの数々がいやが上にも想像できる。建物までは真・行・草と3種類アプローチがあり、それ自体が既に庭園になっている。真の入口は現在閉鎖されており、行・草の入口から入る。途中には枯山水庭園があり蹲もあり少々混乱しているが、時代が進む中で各々の当主が庭園に手を入れるもので、歴史の断面を見る思いがした。

行のアプローチを通り座敷に上がり、南西面の主庭を見る。貞観園は廻遊式庭園とされているが、この主庭は座視鑑賞を意識した作りで、主客はこの座敷でゆったりと庭園を鑑賞したであろうと想像できる。庭園正面のなだらかな三山は建物から等距離にあり、奥行き感が喪失され、まるで大和絵の手法を思わせるフラットな構成である。築山の低木を除けば稜線がくっきりと浮かび、背後の山並みが借景として顕在化し、三山のフォルムと呼応し合い、見事な日の入りが見えたであろう。また築山中腹の石組や右手の滝組にはまろやかで柔らかい形の石が使われ、左右に水を振りながら落とす滝組は優雅そのものである。その上池の手前では、大振りの飛石を品良く大胆に扱い、まるで桂離宮を思わせる技法がそこに見られる。

南西の庭園に連続する北西の庭園は反対に奥行きの深い構成で立体的に作られている。月を観賞するのに心を砕いた日本庭園では一般的に池を東西軸に長く配置しており、南北に長いこの庭園は珍しいデザインと言える。奥行きの深い構成であるが南側から光が入るので、庭園の設えが明瞭に見える。地形との関係もあったであろうが、この様な方法を考えついた庭師に敬意を捧げたい。廊下から見ると心字池と表される複雑な汀と石組、橋、燈籠で視線を奧に奧にと誘導する。手前に大きな主石(私には牛に見える)、春日灯籠を配置し、遠近感をより強調させている。この様な視覚構成はとてもよく考えられており桂離宮の一部を彷彿とさせる。

ただ残念な事に今回の鑑賞では廻遊できなかったのである。園路を歩けば、あらゆる庭園施設、茶室、建物が見え隠れして廻遊の楽しみが満喫できたのではないかと思われる。ぜひ次回は歩いて今回示した仮説を確認してみたいものである。

戸田芳樹

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