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成城 猪股庭園を見る-1

2014.10.27

■プロローグ

真夏、猪股庭園に伺った。成城学園駅北口から歩いて6分、(財)労務行政研究所の理事長を務めた猪股猛氏の元邸宅で、現在世田谷区に寄贈され無料で公開されている。

建築は昭和の名匠吉田五十八、昭和42年8月に完成した数寄屋造りである。大規模(延べ床110坪)な建物は必然的に屋根が高くなるが、2ヶ所に中庭を設けて小屋根とし高さを抑え、2つの茶屋を東西の両端に配置している。そのひとつは居間から離れの様に設え、能の橋掛かりを模した廊下により風情を醸し出している。居間の南開口部は雨戸等を全て引き込み戸にして、庭園と一体化した開放感あふれる空間が広がっている。

庭園についてパンフレットには何も記載されていない。以前読んだ「孤高の庭師 田中泰阿弥」によれば昭和41年猪股邸作庭とあり、年代、仕事の範囲が未確認とも書かれていた。(財)世田谷トラストまちづくりの担当者は岩城造園の作庭と話したが、私も調査不足で現在の所証明不能である。ブログでは歴史と建築について書かれているが、庭園についてはコケが綺麗だった程度の感想しかない。

どうした日本庭園、頑張って作品をアピールしようではないか。

■まちを潤すみどりのボリューム

と、力んだところで玄関から見ていく事にする。成城学園地区は世田谷の中でも「みどり」の多いところであるが、猪股邸は特別「濃いみどり」に包まれている。今では流行らなくなった常緑広葉樹のみどりが固まりとして目に飛び込んでくる。半世紀前、関東の本格的庭園はシイ、カシを主木とした構成であり、落葉の花木はポイント部分に植栽した。一方この時期、飯田十基が始めた落葉主体の庭園が世の中に受け入れられた頃でもあり、時代の好みが変わる潮目の時でもあった。生垣は刈り込みが緩く、ボリューム感のあるウバメカシが道にはみ出しており私は大いに歓迎したい。このカシは西日本の海岸に多く見られ、工場緑地等には使用しているが、当時関東内部のお屋敷で使われたのは珍しく、何かの因縁があるのかもしれない。

■門から玄関までの意匠

門は土壁に瓦をのせた端正な形体で右手に待合を配しており、茶会の時に外露地として使用したのであろう。足下を見ると驚くような立派な鞍馬石の沓脱ぎが深く埋められている。上面の平滑さとエッジの鋭さは滅多にお目にかかれない高級品で、それに続く長尺の葛石と共に、ただならない風格が漲っている。この門から玄関までの小さなスペースは高低差を活かして、大振りな飛石を左右に振り、目を楽しませてくれる。臼石や伽藍石はアクセントとなり、アカマツ林は道路側に傾き来客のお出迎えをしており、おもてなしの心が見て取れる。残念なのは灌木の刈り込みが高く、石とのバランスが悪くなり、中木の存在も中途半端で、広がりや奥行き感を消している事である。

戸田芳樹

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