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福建省の土楼とランドスケープを見る

2014.10.20

翌9月17日、福建省漳州市の山岳地帯にある版築建築の客家(はっか)土楼を見学した。厦門(アモイ)市内から車で2時間半程の山あいにあるが、1970年代にアメリカの情報局が謎の楕円形建物を人工衛星で発見し、核基地ではないかとスパイを送り込んだという逸話がある。しかし、このスパイ活動のおかげで客家土楼が世界に知られることとなり、今では世界遺産に指定されて多くの観光客が訪れる様になった。

この土楼は12世紀から20世紀にかけて建てられたもので、厚い土壁に守られ3階から5階の建物で外敵を防ぐ為、上階部だけ窓を設け80家族以上が生活していた。建物の1階は入口を1ヶ所として、生活と防衛を集団で行う為に地形の起伏や水系を考慮して作った優れた建築遺産である。

まず田螺杭土楼群を上方から見学した。上方からの景観では中央に四角の土楼があり3つの丸い土楼と楕円の土楼、計5棟で構成されていることが分かる。古く見えるが盗賊によって破壊され、現在のものは60年~80年前に建てられた建物である。

道路を下り土楼群に到着。土楼群は地形の変化が上部で見た時より大きく、建物間を結ぶ小広場、通路は生活そのものでヒューマンスケールを楽しく感じた。土楼の内部に入ると、1階は全て売店で物売りの声が賑やかである。しかし2階以上は住居空間となり洗濯物があり、子供も遊んでおり生活そのものが現実に見て取れる。見上げると、建物の円形のラインで切り取られた青空がとても印象的であった。この土楼群に身を置き遠くの山地を見ていると、時間が止っている様に感じたのは私だけではないだろう。

次の土楼、裕昌楼を見学。ここは1棟しかないが規模が大きく、観光客も多く訪れていた。裕昌楼は元の時代(1308年)に建てられた一番古い土楼で、5階建て各階50部屋を有している。地上階の中央に祖廟が置かれ、台所と井戸を設け利便性と宗教制を合わせた中庭空間では、お土産屋等があり大変賑わいのある空間となっている。ただ住民達の商いはのんびりしており、普通の生活なのか商売なのか分からない様な、のどかなものであった。

注目すべきひとつは床のデザインで、排水の機能を明確に設け、入口部等に対する軸線のデザインも考慮し、仕上げの美しい石舗装を作っている。この舗装には心のこもった人の手による作業がうかがえ、気持ちがとても暖かくなり、毎日ここで過ごす住民の気持ちが少しでも分かった様な気がした。そして少し暗い部屋に正装した服をきりりと着た80歳前後のおばあさんがおり、その毅然とした表情がとても印象的であった。

戸田芳樹

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