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小林忠夫のランドスケープデザインを見る-2

2014.09.16

■中心の庭園部
正面の玄関に進むと右手に広い空間が開いており、ここ一番の見所の主庭が出現する。主庭の要素は舗装(石、芝生)と水面と背後の壁によるシンプルな構成で、水面の手前にモミジを2列に植栽した禁欲的なデザインである。この空間では全て直線でデザインされているが、私には仙洞御所庭園の池泉の洲浜に見えてしまった。何故であろう…

この空間を正面から見ると要素の重なりが単に見えるだけで何も面白くない。斜めから見る方がはるかに奥行き感、材質感が立体的に見え、この真正面から見せない方法は日本庭園の視点場からの景観構成と同じ手法といえる。仙洞御所も水面、洲浜、モミジの立体的な見えがかりは同様で、この広場を懐かしく感じるのも、同じ視線の構成だからであろう。

さらにここで感じる事は、「かたち」より州浜の玉石や、モミジの枝葉の要素の「材質感」が大きく印象に貢献している点である。

次に隅田川に向かう移行空間では、隣接する茶室の建物と庭園を程よい高さの幅広の大刈り込みを用いて、柔らかい世界を数本の主木を用い展開している。隅田川沿いにあたる憩いの空間では、ソメイヨシノの列植にクロマツを刈り込んで低木として扱う意外性のある意匠を試みている。海辺では適さないと言われるソメイヨシノを用い、樹下は育ちにくい為、生育の強いクロマツを事もあろうか刈り込みとして用いた。このふたつの矛盾を克服した樹種の組み合わせは25年を経て、立派に成長し強い造形性を見せている。

■和と洋のラビリンス
この経済活動の主場であるモダンな建築に対し別次元の廻遊空間を構築したのは「環境は芸術である」という彼の信念からである。全体の空間構成でバランス良く表現し、それを支える各々のデザインは、日本の美を西欧の美と対比しながら構想したものと思える。

掲載した図で、和と洋の「デザインと素材」の組み合わせ、特にねじれた関係性を紐解いていくと、この空間を解くヒントが現れ、重層的な解釈を可能とする。日本庭園に多く出現するモミジやクロマツに新たなデザインを加えて表現し、ステンレスやコンクリートの新しい素材には和のテイストを演出する。恐らくデザインの過程で小林が呻吟しながら生み出したものがこの作品であろう。それらの総合体により、建物の隙間をうめていく外構デザインではなく、物語のあるランドスケープデザインを敷地の形状と合わせながら生み出している。この作品はもっと深く多くの意味があり、私は作品に接し学んでいかなければならない。

■管理についての伝言
最後に残念な事を伝えなければならない。打ち放しであった主庭のコンクリート壁は暗い茶色で塗られ、池には照明の様なモニュメントが多く建てられている。これは空間の意図を全く理解していない管理者側の責任であるが、植栽管理はそれ以上に問題である。モミジは刈り込まれツゲのようになり、伸びやかなモミジの個性を消している。又、背後の常緑樹は「地」に当たるからボリュームが欲しいのだが、敷地内の手入れのように、きれいに透かして刈り込んでいる。見当違いも甚だしいが、作り手の意図を伝達し続けないと現在の日本ではこんな事になってしまう。まさに肝に銘じたい事である。

戸田芳樹

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