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京王プラザホテルを見る-2

2014.09.01

■ディテールに神が宿る
細部を見てみよう、この外構空間のキーポイントは土地の高低を巧みに生かしたデザインであり、特に斜面を石張りにした事を特筆すべきである。この斜面を土木的な造成法面にすれば単なる植栽空間となってしまうが、石の素材を生かし彫刻的に扱ったことで、作者の意図した逞しい自然の空間となっている。そして上部園路のエッジにある縁石は石を浮かした手法や造形的な石組を施し、より逞しい意図的なデザインとしている。

階段は袖壁の造型により、単なる通過機能を越えた彫刻的な空間に昇華している。その階段を上った上部の園路の脇は建築側に緩やかに勾配をつけて高く石を張り、ふさふさした低木を用い日陰を作り、石材にコケを誘導し、山辺の道らしい演出を行っている。そして所々に深谷光軌のエネルギーが噴出した造型が壁を打ち破り飛び出し、まさに「意図された逞しい自然」がそこにある。

■エピローグ
この名作を私達ランドスケープアーキテクトは様々な点で評価しているが、今回改めてこの場に立って「この空間は庭園だな」と感じた。新宿西口の都市空間のスケールの中では、ひとつのポイントにしか見ることが出来なかった。特に西隣の都庁の広場は無味乾燥、死の広場である。この広場を計画した人は京王プラザホテルのランドスケープをどの様に受け止めたのであろう。そして向かいの住友三角ビルの広場も、30年以上の時間の経緯は舗装の劣化以外では何も感じることの出来ない非人間的空間である。
つまり、この新宿西口計画には総合的なランドスケーププランニングが計画されていなかったことが明解である。インフラである道路を作り造成地に建築と外構を施すだけで、トータルな都市デザイン、つまりランドスケープデザインが行われないと、この様な結果になる見本をそこに見ることになった。
さらに恐ろしい風景を隣の三井ビルで見てしまった。ここのランドスケープはバランスの取れた佳作で、豊かなケヤキの緑と現代的な機能を有した美しい広場があり、いつも利用者であふれていた。今年の春にケヤキを剪定してしまったらしいが、剪定と呼んではならない無残な作業である。どの様な話がなされてこの結果になったのか。プロからのアドバイスはなかったのか。本職の造園技術者がこの作業を依頼されたならば、もっと技術的な主張をして、依頼主を説得すべきであろう。もし作業をやるだけの人であれば造園技術者と呼んではいけないのではないのかと私は思う。
日本人の自然に対する、特に日常空間における樹木への接し方が異常な方向に進んでいるのではないかと最近強く思う様になってきた。

戸田芳樹

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