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吉川市 料亭「福寿家」の庭園が完成

2014.08.13

埼玉県吉川市において天保8年の創業以来、長く地元から愛されてきた料亭「福寿家」のリニューアルに参加し日本庭園を完成させた。建築設計は児玉卓士氏(アーキベルク一級建築士事務所)、施工は(株)佐藤秀による数寄屋建築。庭園設計は当社、施工は(株)深光園の組み合わせで伝統的な日本庭園を作庭した。

福寿家の代々の亭主は庭園作りが好きで、日頃から庭石、石造美術品、樹木を少しずつ買い求め楽しんでいた。今回道路の拡張計画があり、現在の庭園は全て建築や道路に掛かり、新たに庭園を作り直す事となった。亭主、小林政夫氏から子どもの頃木に登ったり、庭石で遊んだ思い出を懐かしく語っていただいた。その事をヒントとして亭主の記憶にあるものは再活用することをコンセプトに、全ての高木、低木、庭石、飛石、燈籠等の石造美術品を組み直して新しい世界を作り出す事にした。その結果、燈籠が6基、手水鉢が2基、欄干石が1基を使った華やかな日本庭園が出現した。

この庭園のもうひとつの特徴は調整池を兼ねて作られている点である。庭園の中央部を約1m下げ、大雨の時には増水して大きな池となる。池部は低い方が自然に見えるが、そこに備えた滝が見下ろされているようでは上手くない。滝は出来れば見上げるように作りたいものだ。そこで滝を2段落しとして少しでも高く作り、深光園の自宅にある4mを越える大石を滝添石にする事で見上げるような滝が出来上がった。この10tを越える巨大な滝添石を設置する池のベースはコンクリート仕上げで至難の業であったが、職人の汗と頑張りで見事な滝石組となった。

護岸石は大振りな秩父の三波石を使って組み上げたが、土留めの石積としての「用」と、石組としての「景」を両立させる護岸の難しさを体験した。その石組の間にナマズに見立てた丸っこい石を忍び込ませたが、気付く人はいるだろうか。当初危惧した調整池の為の池部の低さはかえって距離感を生む事となり、庭園が広く見え高い評価をいただいた。

建築のホールからは湧水部の手水鉢を見せ、そこから流れが繋がり、遠く見える滝石組とは程良いバランスとなった。そして飛石を伝われば織部灯籠を伴った蹲踞に出会い、待合に至る。この露路空間を設ける事で料亭の格式が一段と上がって見えたのも事実である。

元々あった樹木は幹が太く存在感があり、新しく購入した物とは別格の味わいがあった。さらに樹木手入れの水準を上げる事でより庭園の品格は増すであろう。庭園が完成した後も、季節の花々や料理の内容に則した提案をこれからして行きたいと考えている。庭園は完成したときからがスタートであるから。

戸田芳樹

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