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大田黒公園を見る-2

2014.04.16

まず「水の物語」から進めてみたい。休憩室の裏庭に湧水施設を設け、流れは建物の形に従って流し、茶室の前面を直線的に進み、蹲踞、飛石、沓脱ぎ石等の役石に水をからめて計画している。金閣寺型手水鉢の配置は「流れ手水」の仕様であるが役石はなく、サインとして表現したと解釈したい。また舗装端部には野面石積みの天端を舗装より少し上に出し、景に変化を付けているのが好ましい。茶室の下手で直線から曲線にデザインが移行する部分には石積みの天端を水路側に出し、シーンの切り替えを示唆している。

建物に近い造園空間では建物の秩序を受けた直線的な形を用い、外部に向かって徐々に曲線を用いる方法はランドスケープデザインの基本的な手法である。さらに、建物の近くはより緻密なデザインとし、離れるに従い大らかなデザインとする方法も、デザインの基本ルールである。大田黒公園はそれらのデザインの模範的解答と出会える貴重な教材と言いえる。

流れは進み、建物を離れると自然石を用いた沢の風景となるが、古い庭園の石組の厳しさは見られない。滝石組の役石や、所々に軸を通した配石は意図的だが、作者は人工的にならない様にデザインを抑えており、何気ない自然を作り出している。しかし池の手前に設けた州浜はデザインの主張が見てとれ、山奥のせせらぎから突然海の風景出会った様な気配があり何かしっくり来ない。この州浜の意図は何だったのであろうか。

流れの最終部は広い水面で、直線の石積みが「水物語り」を気持ちよく締めくくっている。その上、オーバーフロー部のディテール等にも心が込められており、心が豊かになる。四阿からの景観は、見上げる角度となり、形良く傾いたマツの散林がダイナミックに上方に伸び、水平ラインの広がりと共に気持ちの良い空間となっている。

■建築家とランドスケープアーキテクトのコラボレーション
ただ残念なのは、池端の四阿のかたちについて疑問である。公園の最終部にあり、低い立地の池にたたずむ四阿は正方形で良いのだろうか。正方形の建物は高いところに置き、点景としてのランドスケープデザインに相応しいと私は考えるのだが。

池に面したこの四阿は横長のかたちとし、高い場所からの視線を受け止める役割をすべきではないか。私は、公園内の建物は小さくとも建築家とコラボレーションすべきで、手短に造園事務所内だけで処理すべきではないと考えている。さらに建築家は外構のデザイン、特に植栽等の計画を自分達だけで手掛けるのでなく、ランドスケープアーキテクトと組むべきと常に考えている。相方とのコラボレーションが、より秀れた空間を生み出し、その結果、ユーザーの喜びも大きくなるのではないかと確信している。
そして周遊の終わりは、西洋のデザインの大田黒記念館に向かって登るシークエンスがとても美しい。樹木に覆われた階段には足元まわりにクマザサや低木が柔らかく茂り、密度の濃い空間となっている。
丁度一周して休憩室付近より全体を俯瞰する。広々とした空間の要所に大木が配植され、樹木の間が抜けた軸の先には池の四阿の屋根が遠望される。これが日本庭園の重要なデザイン手法「見る、見られる」の関係で、庭園構成の基本を具体的な景観の中で体験できる素晴らしいスポットである。

■エピローグ
この公園にたたずみながら、私達の先人のことを思い出してしまった。昭和の後半の頃に活躍した中島健、荒木芳邦、井上卓之、伊藤邦衛達は古庭園を研究し、庭園作家からスタートした。そして、時代の要請と共に大規模な公共空間も手掛ける様になり、公園デザイナーとしても大きな足跡残した。先人の作品の特徴は、全体のランドスケープデザインと部分の詳細デザインを見事に合わせ、各自の世界観を空間として作り上げた事にある。まさに世界に誇れるランドスケープアーキテクトであった。

しかし日本のランドスケープ界の黎明期に実績を残した先人を現在のランドスケープアーキテクトはどの様に受け止め、どの様な評価をしているのであろうか。先人の出版物が少ないのも、関心が低いのも、私達ランドスケープアーキテクトのリスペクトが足りないからかもしれない。私達は先人の足跡をもっと学び、彼らが築いた日本の美意識をベースとしたランドスケープデザインをもっと発展させなければならない。

世界は日本のランドスケープアーキテクトに期待しているのだから。

戸田芳樹

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