[本文はここから]

朝倉彫塑館を探る-1

2014.03.07

 
■プロローグ

朝倉彫塑館が2013年、4年間の補修工事を終えてオープンしたと聞きつけ、訪れてみることにした。JR日暮里駅を出て左に坂道を登っていくと、土曜日のせいか観光地の様な賑わいが。人力車も用意しており歩く人々も何かウキウキした風情で、柔らかな下町の空気がただよっている。

大通りを左に曲がり少し行くと、あたりとは趣の異なる空間の朝倉彫塑館が現れる。入口部は、六方石を縦使いとしたあまりみられない造形の壁があり、中に入ると建物との間に小さな広場がある。そしてコンクリート造の建物は不思議なフォルムをしている上に、中央の円形部はコールタールで黒く塗られている。そして建物の上部からブロンズ像がこちらを見下ろしているではないか。ここは一筋縄ではいかない空間へ誘い込む、第一の出会いの場なのであった。

■中庭の構成

展示室での見ごたえのある彫刻の数々を鑑賞して待望の中庭へ。西洋式の建物を出ると渡り廊下に連なり、中庭の対面に純日本風の居室がある。まず驚くのは100㎡程の小さな庭に建物ギリギリまで水面が広がり、バランスを崩しそうな大きな庭石や樹木が個性的に配置されている。この様な景色の庭園は今までに見たことがない。普通の庭園には余白があるものだがここでは要素がギッチリと組み込まれており、その上作庭家なら誰でも頭を悩ませる四方正面のスタイルである。しかし魅力がいっぱいの庭から多くのメッセージが飛び交っており、今までの常識にとらわれず耳をすまして鑑賞することとした。

中庭の広い面積を占める水面の深さは2m程あり、一般の浅い水深の庭とは違う水の表情を見せている。ここ谷中は湧水が豊富で、朝倉彫塑館も地下水を溜めて利用しており、水がとても澄んでいる。そして狭い中庭であるのに飛石と橋による周遊ルートを設けている。水に落ちたらどうするのだろうと余計な心配までさせてしまう。

朝倉文夫はこの中庭を「五典の水庭」と名付け、自己反省の場として5つの巨石で表現したそうで、そのコンセプトが以下となる。

「仁」も過ぎれば弱(じゃく)となる
「義」も過ぎれば頑(かたくな)となる
「礼」も過ぎれば諂(へつらい)となる
「智」も過ぎれば詐(いつわり)となる
「信」も過ぎれば損(そん)となる

そして樹木は1月の白梅に始まり、12月の山茶花で終わる四季折々の白花を用いた。これは白い花を素直、純粋の色と朝倉が見たからだが、完璧を避けるために赤色の百日紅を1本植えたそうである。

お話を伺い静かな水庭に接していればなるほどと思うのだが、この庭はきれい事でないもっと強い力が漲っており、そのエネルギーを体で感じてしまう。そこで、少し強引ではあるが私の想いを語り始めてみたい。

※館内が撮影禁止であった為、画像を掲載できないことをご了承下さい。

戸田芳樹

[ここからはカテゴリ内ナビゲーション]

NEWS

  • 株式会社 戸田芳樹風景計画
  • 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-36-1ミユキビル3F  Telephone:03-3320-8601 / Facsimile:03-3320-8610
  • COPYRIGHT © Yoshiki Toda Landscape & Architect Co.,Ltd. All Rights Reserved.