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気になるまちの風景

2014.02.07

ここ数日、東京は本当に寒い。ちぢこまって下を向いて歩くよりは上を向いて駅まで歩く方が気持ちよい。駅まで住宅街なので高層棟は少なく、空が広がり樹木も目に入る。今の所に住み始めて四半世紀を過ぎたが、風景も随分変化した。駅の途中、とても広い敷地を持つ3軒の屋敷がなくなり、マンションや戸建となってしまった。他所から来た私にはその様な広い敷地が持てるわけもなく、羨ましいとも思わず、敷地に植えられた樹木の四季の変化を楽しませてもらっていた。だからとても残念だった。

ところがここ数年もっと状況が悪くなってきた。樹木の手入れが大きく変化、いやいいかげんになっているのだ。まだ3~4mの樹木なのに芯を止め、小さく素人がやるような仕立て方をしているので、街路樹の様にぶさいくになっている。又、中層のマンションと低層では樹木の高さを建物に合わせ変化させるべきだが、全く同じ樹高で揃えている。極めつけが、そろそろ咲き始める梅を強剪定しているのに遭遇した事だ。隣の家では紅梅が華やかに咲き始めたこの時、剪定された家族はどの様な思いで隣家を見ているのだろう。これらの作業をプロが行っている。

私も一時、庭の手入れをしていたから植木屋さんの考えもよく分かる。小さな敷地で少ない樹木では年に一度か、数年に一度しか手入れの声がかからない。時期は選んでおれず、強く剪定したい施主の気持ちをくんだ上での作業であろう。最近の住宅は敷地が狭く樹木も小さい。しかし仕事をした証拠を見せるにはゴミを多く出さなければならない。だから高い位置の剪定はやめて、低いところでバッサリと切りボリュームを大きくし、仕事をしたらしく見せたいのであろう。職人のトレーニングも不足しているし人の出入りも多く、数年後を目指した植栽管理などとても出来ない相談なのであろう。

どうも植木屋さんは木を切る事だけが仕事だと思っているのではないか。造園という観点からすれば庭にある樹木は地域の風景を作る大きな要素であるし、多様な自然を構成する重要な装置なのである。木を切るのではなく「庭園文化」や「都市の自然文化」を自分達の力で作っているのだと、視点を変えてみたらいかがであろうか。現状とは違う様々なビジネスチャンスが植木屋に出て来ると私は思うのだが。

一年の予算を剪定だけに使わず、草花を用い効果的な風景を創り出したらどうだろう。又まとまった建売住宅を地区ごと管理すれば季節毎に数回作業ができ、開花前の剪定はしなくて済み、花も観られるであろう。また、生物多様性が少しでも実現できる樹種の提案や、野鳥や昆虫の飛来の受け皿とした庭を作れば、都市生活者としての誇りを持てるであろう。

「庭園文化」という視点の切り替えによりルーチングワーク化した作業を排し、施主の意識と樹木技術に風穴を開けてみれば、新しい風景が見られるかもしれない。

戸田芳樹

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