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龍吟庵庭園と光明院庭園を訪れる

2012.11.30

龍吟庵庭園は重森三玲の初期の作品群の中でも名作だ。抽象的で思想的な方丈の庭園に対して、シンプルで分かり易いテーマで作られた庭園である。多様に理解可能な日本庭園の石組に対して、寺の名称に因んだ龍をストレートな石組で表現しているのが特徴である。中心の龍の頭は緑側を向き、胴体を表現した渦巻きの伏せた石組は全体像を緑側から一望できる。三玲の後世における石組より石量を少なくし最少の表現で最大の効果を狙っているのが判る。分かり易さはさらに、竹垣に「イナズマ」の表現を、敷砂は黒色と白色で対比、雲はモルタルのエッジでグラフィカルに描いている点からもうかがえる。

これだけメッセージ性の強さを持ちながら、あざとくないのは何故であろう。石組、特に竜頭の表現は申し分ないし、敷砂のデザインのバランスのよさ、庭を取り囲む塀と竹垣のプロポーションと囲われ感等、いずれもが高品質のデザインであるからであろう。そして、季節によって表現を変えるであろう背後の深い木立は、三玲があえて庭園内に樹木を使わない芸術作品の額縁としての役割を果たしている様だ。以前見た時よりかなり小振りに感じ驚いたのも方坊の庭園と同じ感想である。

少し歩くが、同じ東福寺の光明院庭園を訪ねた。この庭は本坊と同じ時期に作られたが、まったく違うコンセプトとデザインが展開する必見の庭園である。

「波心庭」の名称は光明寺の名前に因み、三組の三尊石から放射されるありがたい光を、石組主体の空間構成によって表現している。ばらばらに見える石組は、二辺を囲んだ部屋から見ると周到に計算して組まれ、軸線上に並んだ石が座敷の中まで飛び込んで来る様に見える。背後の大刈り込みは頼久寺や大池寺をしのぐ規模で、ダイナミックな造型の展開が庭園のコンセプトを包みこむ。そして、大刈り込みの後方を取り巻くモミジを主体とした植栽の柔らかさが、デザイン性の勝った庭園の背景として重要な役割を担っている。

石材は、青石を多用する三玲の後期の作品とは違い、ぶこつな山石を使っており、三尊石につながる重なった石の像は素朴そのままである。白砂は庭園の中央部に集め、建物周辺はコケを配し、一般とは違う大胆な空間の扱い方を見せている。コケ山と砂との境目に白い玉石をあしらえ、月の光を受け反射させる試みは、まさに「波心庭」と名付けた意味の表現である。

月の光の中で観賞したいものである。

戸田 芳樹

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