[本文はここから]

遠山記念館を訪れる

2012.04.22

天神山庭園の帰り、粟野先生ご推薦の遠山記念館に立ち寄った。記念館は埼玉県川島町白井沼にあり、JR高崎線桶川駅、西武線本川越駅からバスが出ているが、とても不便な場所にある。

記念館の邸宅は川島町出身である日興証券の創立者、遠山元一(明治23年〜昭和47年)が幼少時に没落した生家を再興し、苦労した母の住まいとする為に建てられたもの。長屋門をくぐり、茅葺き屋根の玄関から渡り廊下で東棟、中棟、西棟を結ぶ伝統的日本建築は室岡惚七氏の設計で昭和11年に完成した。

この大掛かりな普請は、元一の弟、遠山芳雄が総合監督として采配を振るい、建築意匠は一般には見られない試みがいくつもあり、見所が満載の魅力的な建築である。庭園部は木々が生い茂り、花々も多く見られる一見何気ない美しい日本庭園である。しかし、じっくりと見回すと、庭師や庭園設計者がデザインしたと思われる空間と、芳雄が関与したような新奇なデザインが重なり合い、少々首をひねる空間が構成されていた。それはそれで面白い趣向といえるが、長年日本庭園を見続けた視点からは気にかかる空間が多く、それについて以下に述べていきたい。

・日本庭園のデザイン原則である一筆書きの回遊の園路が作られていない。
・庭園の見せ場、奥に進む流れの意匠を見せる視点場が用意されてない。
・邸宅部の芝生面より南面流れの後方の芝生地が高く、不安定で落ち着かない。
・路地が細長く作られ、動きが直線的で味わいに乏しく、シークエンスに変化がない。
・燈籠や蹲踞を配した空間にまとまりがなく、日本庭園としての収まりがなされていない。
・後から設置したであろう、流雅之の彫刻の存在理由が不明で位置も良くない。

庭園の魅力は木々が豊富で花が咲き、水が流れていれば気持ちが良く、ついデザインの本質を見逃してしまう傾向にある。立派な遠山記念館の日本庭園を上記のような辛口で記したのも、庭園を自らの仕事としている自戒を込めて書いたからである。庭園にきっちりと正対して味わうのは作者に対してのリスペクトでもある。何気なく見て、何気なく庭園の管理をすれば、見て綺麗だが庭園の本質を消してしまう事にもなる。

本庭園の魅力は奥行きの深さにあるが、手前に高木が生い茂り透けて見える立体感がなく平坦に見えてしまう。高木を伐採する勇気が必要であろう。低木も生い茂り、石組みや地割りを隠してしまい、庭園の本質を見えなくしている。完成当時の考え方に基づきながらもう一度管理の手法を考える必要があろうと思った。

いずれにしてもこれだけの大庭園を維持管理するには、大変な費用と時間と意思が必要である。庭園の管理を継続されている関係者の皆様のご苦労に対して最大の敬意を表します。

戸田 芳樹

[ここからはカテゴリ内ナビゲーション]

NEWS

  • 株式会社 戸田芳樹風景計画
  • 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-36-1ミユキビル3F  Telephone:03-3320-8601 / Facsimile:03-3320-8610
  • COPYRIGHT © Yoshiki Toda Landscape & Architect Co.,Ltd. All Rights Reserved.