[本文はここから]

竹原市の歴史的景観地区

2012.04.01

竹原市の歴史的景観地区を尋ねた。竹原は広島県のほぼ中央、海に面した港町で室町時代から交通の要衝として発展した。江戸時代は製塩業で栄え、多くの富をもたらした。その往時の町並みが一部手厚く保存され、「安芸の小京都」として親しまれており、2000年に国から「都市景観百景」に選定された。

ここの町並みは、いかにも作ったとか、頑張って保存したとかの風情がなく、温かい風とともに歩むには丁度良い、ゆるみ感と長閑さが感じられる快適な空間であった。客引きするお土産物屋もなく静かで、住んでいる人たちの生活感もそこはかと漂い、とても気持ちが良い。多分休日以外ではもっとのんびりした風情が見られるのであろうと思えた。夫々の家の入り口前にはさりげない花が飾られ、可愛らしいアクセサリーが各家の特徴を現し、もてなしの気持ちが外部に溢れている。

日本外史で知られ頼山陽の祖父、頼惟清の住まいを見つけた。建物は代表的な素朴な町家で、江戸時代中期の様式が良く残っており、しんとした湿気のある土間と、明るい日差しを受けた後庭との対比が心を和ませてくれた。

腹ごしらえもしなければという事で、藤井酒蔵交流館でおそばを食した。江戸時代末期に建てられた酒蔵の一角を改造した建物は天井が高く、陰影に富んだ空間はほんのりと酒の香りが漂っていた。定食メニューには「ほろ酔いコース」があり、少量の地酒がついているのも嬉しい限りである。木造で囲まれた安らぎの空間に長時間滞在すると、方向感覚と時間感覚を失いそうになり、少々危なく感じるスペースでもあった。

建物を出ると太陽は少し西に傾き、町並みの陰影は深まり「安芸の小京都」は深い美しさに包まれていた。もう一度町並みを懐かしみながら散策し、駐車した「竹原 道の駅」に戻ったが、まさに買い物客が一杯で喧騒の極みを呈していた。

江戸時代の町並み空間と、現代の商業空間を対比すれば、時間軸は圧倒的な長さがある。しかし、ここ竹原美観地区の空間軸でとらえれば僅か100メートルの距離に過去と現在が凝縮されている。

まさに現代ならではの重層的空間を体験出来た貴重な半日でもあった。

戸田 芳樹

[ここからはカテゴリ内ナビゲーション]

NEWS

  • 株式会社 戸田芳樹風景計画
  • 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-36-1ミユキビル3F  Telephone:03-3320-8601 / Facsimile:03-3320-8610
  • COPYRIGHT © Yoshiki Toda Landscape & Architect Co.,Ltd. All Rights Reserved.