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オフィス空間のランドスケープ −9/9

2011.05.02

□都市に生まれた大きなオープンスペース

2007年に生まれた東京ミッドタウンはファッションの街六本木にもうひとつの魅力を提供した複合空間だ。
旧防衛庁の跡地約10haを開発したもので、その4haをオープンスペースとして開放しており、文字どおり開かれた街である。
ここの売りは、なんといっても都心で大空を体感できる広々とした空間であろう。
敷地奥部の檜町公園まではおおらかな回遊路によって結ばれて、豊かな緑地空間が連続している。
ランドスケープデザインは世界中で活躍しているアメリカのランドスケープ事務所EDAWが受け持った。

ここのランドスケープの魅力は広い空間とゆるやかにカーブしながら奥に導く園路のシークエンスである。
途中、安藤忠雄設計の美術館もあり、既存樹や移植木をランドマークにした景観は美しいし、公園に隣接する勾配のついた平坦な芝生広場は、様々なイベントがある楽しい空間となっている。

しかし、何かがもの足りない。
空中写真での園路の複雑な交差は視覚的な面白さがあるものの、アイレベルでのシークエンスではその効果は生きてこない。園路も水路も池も石の施設も大味なプロポーションで心に響かない。空間のコンセプト、構成はすばらしいのだが、細部に気持ちが込められていない。つまりディテールに神が宿っていないのである。

外国人を主体としたチームは日本のチームとどの様な形で分担し、作業を進めたのであろうか。
デザイナー同士のコミュニケーション、イメージの伝達、最終的な決断がすべて結果として空間に現れてくるものである。
ランドスケープデザインは細部までのこだわりを完成するまで、持続していかなければ感動的な作品とはならない。


□まとめとして

1970年代から40年間、様々なプロジェクトを通じて業務空間のランドスケープを眺めて来た。
個人の作家が頑張って作家性の色濃い作品が出現した時代。外構といわれた空間を、広い視野を持ったランドスケープ空間に変革しようとした時代、アートを挿入する事で新しい都市空間を目指した作品、複合的なジャンルの集合体で表現したコラボレーションの時代、密集する都市に大きな空間を空けた作品、時代背景により様々な作品が生み出されて来たが、現在も各々のテーマによるランドスケープアーキテクト設計活動は継続している。

生き物である人間は、近代都市が異物、又は仮設的な器であったと感じていたのではないか。
近代都市に対して身構えた都市民は冷たい無機質な空間で、とげとげしくコミュニケーションが不足した生活に自らが甘んじていたのではないか。
その様な時代を私達は過ごしてきたが、都市に住まう事の意味を自らに問い、近代都市を手の内に入れようとする気運を今持ち始めている。その先端の街づくりが、環境をテーマに、風の方向を考慮して建築物の配置を変えた大崎再開発のランドスケープであり、人が生き物の一員として自覚できる幸せな三菱一号館のガーデンである。

自然と人、人と人のコミュニケーションを復活する事で近代都市をもう一度再生したい。
そこに、大きな力を発揮できるのがランドスケープデザインである。時代の先を読む建築家がランドスケープを語る様に、森(生き物)を語れない人が都市を語れない時代が到来している。
私達ランドスケープアーキテクトはもっと自信を持ち社会に豊かな空間を作り出す新しい行動を起こさなければならない。
今がまさに、そういう時代である。


戸田 芳樹

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