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カンボジアに行ってきました−1

2011.09.11

9月3日から9日間、熊谷玄氏(stgk)、伊藤圭太氏(SO design)と3人でカンボジアに行ってきました。
今私達はカンボジアのプレアビヒア州に計画されているエコビレッジのプロジェクトに参画しています。
現地の確認とカンボジア政府との打合せが主な目的でしたが、私も伊藤氏もカンボジアは初めてなので、主要な都市と参考となる事例も併せて見学して参りました。


エコビレッジの計画は、世界遺産であるプレアビヒア寺院の保全に起因します。
現在は鎮静化していますが、カンボジアとタイは長きにわたる紛争関係にあり、国境に建つ寺院の周辺には今も両国の軍事キャンプが設営されています。
無数の地雷も未だに散在し、寺院自体も銃弾や砲弾により深く傷ついていることを間近に確認しました。
カンボジアとタイの国境は崖地が多く、高台に建つ寺院は「天空の寺院」と称されます。
長い時間を経て風雨に朽ちていく建物と、その周りに息づく緑はまさにラピュタの1シーンの様でした。
ユネスコは寺院の眼下に広がる大地に森を復活させることを世界遺産の登録条件にしました。森の復元対象地はカンボジアの方々の生活の場でもあります。
その代替え地となるのがエコビレッジです。


プレアビヒア日本協会はカンボジア政府から12haの土地を譲り受け、農業を通じてエコビレッジの住人が自立できるような見本農場の計画を進めてきました。
協会にゆかりの深い熊谷氏がいよいよ具体的な計画段階にさしかかったところで、私達に声を掛けて下さったのが今回の視察の直接的なきっかけです。
本稿では今回視察した中で、このプロジェクトが目指すべきコミュニティーのあり方を実践している「IKTT伝統の森」について、少しだけ紹介させて頂きます。


「IKTT伝統の森」はアンコールワットがあるシェムリアップの中心から30kmほどの郊外にあります。
未舗装の道路は雨期なので大きな水溜まりが連続し、着いたときには感動するくらい険しい道中だったことを鮮明に記憶しています。
伝統の森の創設者は森本喜久男さんとおっしゃる日本人です。
京都出身の蝋纈染めのアーティストで、タイやカンボジアの伝統織物についての考察が深く、養蚕から、紡績、染め織りまで全ての工程を伝統の森の中で現地の方と協働で行っていました。
染色の材料も森で育てているそうです。伝統の森と言うだけあって木立が清々しい緑陰を作っていましたが、土地を取得した当初は木々が切り倒された荒れ野原だったそうです。
スタートはカンボジアの仲間と3人。
徐々に賛同者が増え、難しかった土地の取得も人と人の繋がりで5haの土地が今では20haを超え、森の住人も200人を数えるそうです。森本さんは語って下さいました。

「私の頭の中には明確な青写真があります。それはカンボジアの原風景のようなものです。」
伝統の森の木々はその殆ど全てが皆で育てた木だそうです。
切り株に生えたひこばえを苗木にして10年の歳月を経て大きく育った森は、住人の暮らしや、農業や養蚕などを優しく守る緩衝帯となっていました。
日本にいるときは農業の経験が殆ど無かったそうですが、高品質の織物を作るための環境づくりが、自然との上手な付き合い方の習得に繋がったことは言うまでもありません。
森本さんはご自身の創作欲を満たすために深く土地と関わり、より多くの人の賛同が得られるような目標を次々に打ち出すことが出来る人です。
森本さんの頭の中にある青写真は、ところ違えど、おそらく世界中の人々が共感できる原風景なのだと感じました。


伝統の森をご紹介下さいました吉田名誉教授(東京大学)、そして滞在中とても親切にして下さった森本さん、竹中さんに心より感謝しております。オックン。


大橋 幸雄

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