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尾道の石造美術を訪ねて

2011.06.26

続いて尾道の石造美術について書いてみたい。

まず尾道の東北部(鬼門の方角)にある八幡神社に。
全体に荒れた風景となっており、昔の面影が残念ながらなくなっていたが、ユニークな灯籠を紹介してみたい。
二対並んだ灯籠の台座が注目で、切石積みの中に軍杯と扇が入っている。
写真は軍杯だが、台座上部の座石まで食い込んで造形している。
軍杯を入れた事そのものも面白いが、この思い切ったデフォルメは誰かに指示されて作ったのではあるまい。
職人の心意気が軍杯を大きくし、いたずら心を前面に出したから作れたのであろう。
このような石造美術に出会うと、気持ちが和むと同時に元気が出てくるようだ。

次に福善寺の墓所に桃を抱えた猿を発見した。周りは江戸時代の墓ばかりの中に突然座り込んだ猿。
猿はかわいい表情だが、墓所というシチュエーションではかえって不気味な雰囲気をかもし出しているようだ。
抽象的で肉体を感じない墓所に具体的な形で肉体を示しているこの石造が与えるインパクトは相当に強い。
寺、墓所と関連、桃と猿の関係、何もわかってないらしく、どなたか推理好きな人の応援を頼みたい・・・

次に大山寺の三匹猿。
近年作られたもので、このような予定調和的なものに出会うと同じ猿でもほっとする。先に進む事とする。

隣接する御袖天満宮は大林宣彦監督の映画の有名なシーンの石段がある。
この階段はすごい造形で、幅5メートルほどの階段石はすべて一石で作られており、石の持つ力と神秘性が強く放射されているように感じる。
ここの最上部のところだけ二石となっているが、何事も完璧はないのだという故事からの引用だそうだ。
この石段とその脇の豪快な石積みの造形に毎回驚いてしまうのだが、今回ひとつの発見をした。

写真は手前の大石積みの基部、階段の側部、その間の押さえの石積みを示しているが、夫々が違った作り方をしていてとても面白い。
大石積みの基部は大胆なラインと少々荒い目地によるダイナミックな造形。
間の石積みはきめ細やかな目地の仕上げで建築的な造形。そして階段の側部は、ここはあまり見えないだろうと職人が判断したのか、後世修理したのか、少々ぬるい手抜きの作りとなっている。
材質が統一されてなく、目地も整理されてなく、少しはらんだ様な造形を同じ作者がするであろうか?

思わず二ヤリとしてしまったが、職人の心意気と手抜き、緊張と弛緩、真行草、日本のものづくりは人間臭く奥が深いなあと、ドラマを見る思いがしたのも確かである。

戸田 芳樹

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