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北京での現場管理 その2

2011.05.17

中国では、集合住宅のランドスケープに「水」の空間を求めるケースが多く見られる。
乾いた都市の中で自然に出会える水辺に人気があるのは当然の事だ。
「水」を扱えば、滝、流れ、水面、噴水等、多彩な表現が可能であり、バラエティー豊かなランドスケープが展開できる。

「水」空間において重要なのは、水辺と陸地の接点に注意をはらう事である。
この接点には古来より護岸石組、州浜、縁石等の技法を使った名園が作られてきた。
日本庭園では護岸石組の優劣により庭園の評価が定まり、後世美しい伝統技術の事例として庭園に使われ、受け継がれてきた。

さて、今回のプロジェクトの滝から見てみよう。
北京市精華園の集合住宅ではモデル区(販売センターとモデルハウス)のランドスケープに滝、流れ、水面を組み合わせた水空間を計画した。
これはこの事業のテーマのひとつである環境配慮の具体化をランドスケープ空間において表現したものである。

中国において今まで、石組師と出会う事はなかったが、今回は自信たっぷりの親方が現場で作業していた。
石組みをひと目見るなり、対応が大変難しいと感じた。
日本の石組は重心を低くし、地中から盛り上がっている様に見せ、その石組の中に所々役石(滝添石、遠山石)を立ち上げて空間を作るケースがほとんどである。

中国の石組はまったく逆で、いかに大きく見せるかが主眼である。
古庭園を見ても、石を重ねたダイナミックな表現や、驚くような形をした怪石が主流である。
だから中国の石組師が一生懸命仕事をすればする程、本格的な中国庭園になってしまう。

私は、日本庭園を作るというよりも自然の風景にある石のあり方を目指していたので、作られた結果に対して違和感を持った。
ほとんど出来上がっている石組に対面して私は迷ってしまった。
二週間かけて組んだ石を全部取りはずし、始めからやり直すか、それともこの滝組みを容認するか・・・。

私には北京で二日しか時間がなく、やり直すわけにはいかない。
そこで今回は折衷案でいくしかないと覚悟した。
多すぎる石を削除し、高く持ち上げられた不安定な石は低くした。そして低木、地被を植えるスペースを少しでも多く取り、過剰気味でごつい感じの石組を優しく感じられる様に植栽でカバーするよう指示を出した。
水が流れて、落水の音が響き、樹木が風にそよげば、少しずつ美しい空間になってくれると思う。
次回の現場監理では、もう一度植物のデザインを指示する必要があろう。

中国において日本庭園の石組を行うには、材料調達から石組指導まで、ほとんど現場に張り付いていなければならない。
それが不可能であれば中国の技術者と共にコンセプトをベースとした新しいスタイルを作り出すしかないであろう。
中国と日本の自然の違いを考えつつ、やすらかで豊かなランドスケープデザインが両国民にとって必要であると、改めて考えた現場であった。

戸田芳樹

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