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伊東「東海館」を見て

2010.09.14

JR伊東駅より徒歩7〜8分、木造3階建ての威風堂々とした旅館が川沿いに現れる。この旅館(東海館)は、昭和3年に開業し、伊東温泉の中心的な役割を果たしたが、平成9年、客足の途絶えと共に閉館、現在は市民の活動の場、観光客の誘致施設として使われている。

昭和30年代の最盛期では、木造3階建ての旅館が川沿いに4軒、競い合い、高品質なランドスケープ景観を形成していた。
私も昭和41年、大学を出た年に、造園職人の見習いとして旅館の風呂の石組工事に赴き、その風景に出会っている。
現在は2軒しか残っていないが、歴史を感じさせる建築の佇まいは当時の面影を充分に感じさせるものである。

今回は外観ではなく、内装デザインの面白さについて紹介してみたい。
東海館は、旅館としての格式を高める為、客室が戸建ての様な趣を演出したと思われる。
客室の入口部は玄関としてしつらえ、ひさしを設け、その角度を平面的に微妙に変化させている。ある種の統一感はあるが、ゆらぎのある配置は、千鳥足で赤提灯街を散策している様な気にさせてくれる。

又、足元には丸太をスライスした材を、あたかも飛び石のように配置し、戸建てのムードを強調し、変な感じなのだが妙に暖かい。
部屋は現在の旅館と比較すると意外に狭く、風呂・便所もなく、後年客足が落ちてしまった理由も理解できる。
しかし、細工はあちこちにこだわりのさえを見せている。
床の間の脇の飾り窓は客室により全て意匠を違えており、見学者の目を楽しませてくれる。富士山のフォルムをシンプルに表現したもの等、現代の感覚に通じるモダンさがあった。
客室の意匠は階が上がる程、自由に有機的になり、銘木をふんだんに使った階段部が見物である。さらに、4階には望楼が設置され、天城山から相模灘まで、涼しい風と共に眺望が楽しめる。

当館は大浴場や和風喫茶室も設置され、観光施設としての整備がなされておりますので、伊東方面に行かれる折には足を延ばすことをお勧めします。

戸田芳樹

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