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乱立する上海の商業施設

2014.04.09

中国の不動産バブルもそろそろ終焉かとメディアを通じて目にすることがある。しかし上海の街並みを眺めていると、そのような懸念もどこ吹く風という様相で不動産開発の勢いが衰えない。とりわけ商業施設は完全に供給過多と思われるが、それでもまだ後続に新規開発が控えており、至る所で重機の音が響いている。

先日、商業施設を見学するため浦東のあるエリアを歩いた。そこは、道路を挟んで2つの施設がほぼ並ぶように建っており、いずれもオープンして2〜3年である。それぞれ話題性を持っての開業であったが、現状を見比べると勝負ありといった印象は拭えない。商業運営の知識も持ち合わせていない私が言うのはおこがましいが、両者の違いは基本的な計画スキームの差ではなかろうかと思う。その場所に応じたニーズを把握しながらハードとソフトを一体的に計画する、そういった基本的なところである。商業開発のノウハウはやはり外資系デベロッパーに一日の長があると思うが、そのメリットを持ちつつ中国での仕事のしやすさを兼ね備えている香港系の企業が今、上海でも猛威を振るっている。

上海を東西に貫く准海路の界隈は、もともと旧フランス租界だったこともありお洒落な街として認知されている。定番のブランドショップや個人経営のセレクトショップなどが軒を連ねているが、最近は大型商業施設の攻勢が目立つ。観光ガイドに必ず登場する上海新天地はそもそも香港系の瑞安房地産が手掛けた商業複合施設であり、オープンから10年以上経った今でも観光客を中心として地区の集客を牽引している。そして去年、香港系デベが新たに2つのショッピングモールをオープンさせた。

「環貿商城iapm」は香港及び上海浦東にあるifc mallを手掛けた新鴻基地産が開発している。iapmのコンセプトは名前の由来となっている「am(午前)・pm(午後)」、つまり日中だけでなく夜間の集客も目指したモールということである。同社が運営する香港九龍観塘区のapm mallは午前6時から午前2時まで営業しているそうだが、それに倣って周辺施設よりも遅い時間まで営業を行っているようである。

「K11 Art Mall」は新世界集団による「アート、人、自然の調和」というコンセプトのモールで、香港の尖沙咀にも同様の施設が先に開業している。上海のK11は既存ビルの低層部リニューアルということだが、モール内を賑やかに装飾するオブジェや屋内農園などコンセプチュアルなインテリアが目を引く。個人的には屋上庭園が人混みもなく気持ち良い。

両者とも共通するのは、明確なコンセプトを打ち出しているということである。単なる物珍しさだけではなく、ターゲットを絞って特色ある店舗づくりを行うことが競争に打ち勝つための基本なのだろう。その中でランドスケープデザインが果たす役割も決して少なくない。中国は、日本と比較して使用できる材料の幅が狭く施工精度も低いが、それでも街を歩いていると驚きや発見が多い。そういった熾烈な開発競争を横目に、設計者も多様なニーズに応えられる柔軟な発想を持たなければ生き残れないのだなと改めて思う。

高沖 哉

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