浙江省寧波を訪ねて(2)
2014.03.04
寧波博物館を後にし、次に訪れたのは寧波市の中心に位置する寧波美術館である。美術館は「老外灘」と呼ばれる歴史建築及び街並みを保全した再開発エリアの北側に面している。
外灘は訳すと「外国への河岸」となり、つまり国際港を意味している。しかしながら海には接しておらず、甬江という川の河口から約20km上流にある奉化江・余姚江との合流点の北岸を中心に貿易港として発展した。そもそも唐宋時代より繁栄を極めた港ではあったが、アヘン戦争後に締結された五口通商章程により対外的に開港されることとなった。以来、外国人及び外国文化が多く流入し、当時の領事館や銀行、教会などが歴史建築として今も残っている。
寧波美術館の建築は、廃止された水上輸送ターミナルを政府の依頼でリノベーションした物件である。元の建築は現行の耐震基準に満たなかったため、構造をそのまま利用することは適わなかったようである。それでも柱や内部空間、川へと伸びる桟橋など出来る限りターミナルであった頃の面影を残し、都市の記憶を刻み込もうとしている。
美術館のアプローチは、まず方形の水盤を橋で渡る。橋を渡ると高い壁がめぐっており、中へ入っていくと一旦広場へ出て開ける。広場に至る道のりは階段もしくはスロープになっており、中2階程度まで上がったことになる。そこから更に2階レベルにある美術館の入口に向けて、地上部の通路と立体交差する陸橋が架けられている。後から調べたところ、その空間構成は中国の伝統的な住宅様式のアレゴリー(寓意)になっているそうだ。
屋根は屋外に露出した鉄骨により支えられ、壁面は板材が大面積を覆っている。シンプルで力強い構成は、港湾施設が持つ大スケールと機能美を感じさせる。残念ながら川の対岸から眺めることは出来なかったが、写真で見ると川幅の広い甬江に対してその存在感が明快なコントラストを創り出している。
もう一つ残念であったのが、次の展示準備のために閉館していたことである。美術館は常設展示が無いため、観覧できるのは企画展の会期中のみとなる。もし内部まで見学したいという方がおられたら、事前に会期を確認していただきたい。
高沖 哉