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浙江省寧波を訪ねて(1)

2013.06.25

端午節の連休を利用し、浙江省の都市のひとつである寧波を訪れた。旅の一番の目当ては、建築家ワン・シュウの設計した作品を鑑賞することであった。

ワン・シュウとは、2012年のプリツカー賞受賞者である。若かりし頃は主に建築の研究にいそしみ、2000年に中国美術学院の建築芸術学院の教授に着任してから設計活動を本格化させたようである。よって、作品の数そのものは決して多いとは言えない。しかも、それらのほとんどは彼が本拠とする杭州市及びその周辺の都市にあり、寧波には彼の代表作とも言える寧波博物館や同じく大規模プロジェクトである寧波美術館が存在する。今回はその2箇所を見て回った。

先に訪れたのは博物館であった。中心市街地から南へ約10km程度、鄞州区政府の庁舎を含む開発区の一角にそびえる建物は、まずその迫力に圧倒される。まるで中世の城壁を思わせるような佇まいだが、思っていたほど重々しいという印象は受けない。恐らくそれは、ファサードのテクスチュアによるものなのか。使用されているレンガは全て明代・清代のものだという。青レンガがベースであるが、そこに茶や黒のレンガも入り込んでグラデーションを形成している。それらが作り出す表情は、無骨で繊細という二律背反的な感想を抱かせる。無作為に見せるべく計算されたデザインなのだろう。

また、部分的に竹を型枠にした壁面も挿入されている。遠中景における陰影と近景としての竹の節まで映し込んだテクスチュアは、その素材の魅力をダイレクトに表現している。旅の途中で寧波周辺の丘陵地に多くの竹林を見たが、まさにヴァナキュラリズムを体現するディテールのひとつである。

個人的に興味深かったのは、積み上げたレンガの隙間から生えていた植物と、エサか巣穴があるらしく壁面を突くように飛んでいた小鳥たちだ。粗く積み上げられた多孔質な壁面は、いつの間にか生物にとっての住処ともなっていた。無機的とも思える物質が有機的に機能している様は、またしても二律背反という言葉を連想させた。しかし、レンガなど土を焼いただけのものであるし、不思議は無いのかもしれない。構造はもちろん現代の技術によるのだが、その土地で手に入る素材を使い、その土地で可能な技術を用いた表層は、その土地の空気とも融合し大地の一部となっていたように感じた。

高沖 哉

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