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リノベーションがもたらす新たな街並みづくり

2012.05.01

上海の街並みは高密かつコンパクトで、日本の都市に近いスケール感を持っています。世界有数の経済都市となった当地は、19世紀以降の貿易港としての発達と、租界形成による外国人及び海外資本の流入により、急速な発展を遂げました。浦東・嘉定・松江といった上海郊外のエリアでは今も新都市開発が進められていますが、中心市街地はほぼ開発され尽くした感があります。そのような状況で近年の不動産におけるキーワードの一つとなるのが「リノベーション」です。

上海には今もまだ租界時代の西洋的デザインを持った古い住宅建築が残っており、それらを「老房子(lăofāngzi)」と呼んでいます。その老房子をリノベーションして2011年にオープンしたのが「思南公館」という複合施設で、住宅やホテル・オフィスの他、お洒落なギャラリーや飲食店などが融合した空間となっています。また、敷地の隣にはかつての周恩来の住居であり、同時に中国共産党代表団上海事務所でもあった「周公館」が保存されており、そういった周辺環境とも相まって古き良き上海の面影を感じさせています。

その思南公館から徒歩で数分の距離には「8号橋」という、1970年代に建設された自動車のブレーキ工場の倉庫をリノベーションした創意園があります。「創意園」とは、例えば設計事務所やアトリエ、その他デザイン関係のオフィスが入り、そこに飲食店やショップが併設された施設の総称です。8号橋はその走りの代表的物件とのことです。ファサードには倉庫で使われていたレンガを再利用するなど、上海の近代産業遺構を現代にうまく調和させています。ちなみに、この物件のデザイナーは上海で活動する日本人の建築家です。

近年、著しい経済成長と共に不動産業界はバブルに沸いていましたが、現在は政策によりブレーキがかかっています。今後は不動産価値を向上させるような計画がより一層求められると思いますし、リノベーション物件も増えていくでしょう。その中で街並み保存や近代遺構の活用といった考え方の素地が形成されつつあるのは、私達ランドスケープデザインに携わる者にとっては好材料と言えます。8号橋のように、日本人でありながも中国の地域文化を理解し、それをデザインへ昇華させるような活動が出来ればと思います。

高沖 哉

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