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雲南紀行

2011.11.16

現場踏査のため中国の南の国境に近い、長年憧れの地であった雲南省を訪れた。
現場は江川という地域で、昆明の南側に位置する玉渓市に属している。
昆明の空港から車で一時間半から二時間程度の距離にある。道路が建設中の箇所もあり、玉渓市の中心市街地から現場までは更に40分を要した。
現地を訪れると、その土地がきっと好きになるだろうと知り合いから聞いていた。
実際にその景色を目にした瞬間、それは現実となった。
ただ好きというよりも、愛するという表現が適切かもしれない。また、土地に対して尊敬の念を抱くようになった。
目の前にある湖や山や空だけではなく空気まで全てが澄み切って、それがまた美しく、とても不思議な感覚を覚えた。


江川には二つの淡水湖がある。
いずれも海抜は1700m位のところにあり、それぞれ「星雲湖」と「撫仙湖」と名付けられている。
星雲湖は面積が34.33km2で、水源は主に山から流れ込んでおり、湖水は少し濁りがある。
また、「大頭」という大きな魚を産出している。撫仙湖は面積が216.6km2と非常に大きく、その範囲は江川・澄江・華寧という三つの地域に及ぶ。
雨が流れ込む以外、主な水源は地下水であり、その水質は透明度が高く評価で言うと国家一級水質、つまり飲用水にできるレベルの水質ということである。
湖水量は206.2億m3であり、それは中国全土の一級水質およそ10%を占めることになる。水深は一番深いところで158mもあり、「激浪」という魚を産出している。
二つ湖の間には小さな河川があり、水は撫仙湖から星雲湖に流れている。
河床に多くの石が堆積している箇所があり、二つ湖の魚はそこまで泳いで来るものの、お互いに他方の湖の環境には適応しないためそこより先の領域には入らない。
現在、その場所は「界石公園」として整備されている。


計画範囲は、将来取得予定の土地を含め約3万畝(約20km2)である。
あまりにも大きいため、一通り回るだけで3時間程度かかった。
計画地は撫仙湖の沿岸にあり、小高い山々に囲われている。カルスト地形でリン酸を多く含んだ赤い粘性土が堆積し樹木が育ちにくい。気候も興味深い。
高原で乾期に入っているため、日当たりの良い所に立つとすぐに暑く感じるが、日陰に入ると途端に肌寒く感じる。
道路は未舗装なので、風が吹くと砂が舞い上がる。
雲南省は季節が春しかないと言われているが、この時は中国中部の黄土高原にいるように感じた。


沿岸と山裾には野菜畑が広がっており、ニンニクの芽とエンドウが勢いよく伸びて、青くつややかな色合いが目に入ってくる。
しかし山の窪地に立ち入ると、再び黄土高原を思い出すような光景が現れてくる。
収穫後のトウモロコシ畑が一面に展開しており、残された茎と葉は白く枯れていた。
風が吹くと音が立ち、それはまるで空を飛ぶ白鷺のために伴奏しているかの如く聞こえる。このような風景を目の当たりにし、一体自分が北方にいるのか南方にいるか一瞬わからなくなって混乱した。
しかし湖を臨むと、その美しい水がこの地は麗しく不思議な雲南であると教えてくれた。


水があまりにも綺麗で澄み切っていて、湖の底まで見える。
水草も、その一本一本がはっきり見える。「水清ければ魚が棲まず」ということわざがあるが、実際に水辺に沿って散歩したところ、魚を一匹も見つけることが出来なかった。
撫仙湖はヒョウタンを逆さにした様な形状で、南よりも北の方が幅が広く、その真ん中が狭くなっている。
東西に十分な幅を持ち、南北の奥行きが非常に深いので、まるで天まで伸びるかの様に見える視覚効果をもたらす形だと言えよう。
水面は広く、空と同時に色彩が変化する。湖面に写り込んだ色によって空の様子がわかる。
午後五時頃、湖の色はまだ青く清らかである。六時頃、夕日を浴びると、まるで虹が伸びたかのように沿岸に近づけば近づくほど色の変化に富み、赤くなったり、オレンジ色に染まったりしていた。
六時半頃、わずかな夕明かりの中で湖は白くなり、それは茫々たる光景であった。
朝の湖が更に綺麗だ!
まだウォーミングアップが十分でない太陽のもと、湖と周りの山々はもやに覆われはっきりとした姿を見せない。それはまるで恥じらいながらベールを纏った少女のようでもあった。


空は感動するほど青く綺麗である。太陽も昇った空に月が浮かぶシーンを生まれて初めて見た。
驚いたと同時に、人類が青空を汚していくことで、元来の喜びを失っているのではないかと思った。


先に述べた「界石公園」だが、その周辺の植栽も不思議である。
サバンナや熱帯雨林に出現する植物が同じエリアに集中している。二つ湖の間にある川は幅がわずか十数メートルだが、地形や山からむき出した岩の形状が変化しているため、独特な植物群落が形成されていた。
川の一辺にはかなり年月が立ったサボテンがあり、山頂にはガジュマル系の木があり、川の向かい側には冬咲きの桜がたくさんある。その桜は11月~1月頃に咲き、開花期も長く集中的に咲く。
咲いている様子を目にしたことがないが、自然の雄大さに頭が下がった。
なぜなら、桜とサボテンの同時に目に映るシーンが想像を超えたからだ。


以上が初めて訪れた雲南の印象である。
撫仙湖は自然の貴重な宝物であり、これからもずっと玉渓を守り続けて欲しい。永遠に清らかで美しく、安らぎの地であり続けることを祈る。そして、全ての人が撫仙湖を尊敬し、愛することも祈る。

刘 佳

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